軽井沢には、小さな町の規模からは想像できないほど多くの美術館やギャラリーがあります。
それは、この土地が長いあいだ避暑地として文化人や芸術家を迎え入れてきた歴史とも無関係ではないのでしょう。
森の中に点在するそれらの空間は、都市の美術館とは少し違う空気をまとっています。展示を「見に行く」というより、静かな環境の中で自分の感覚を開いていくような体験に近いかもしれません。
その中でも、建築と自然、そして作品の世界が一体となった場所として知られているのが
軽井沢千住博美術館 です。
この美術館は、日本画家 千住博 の作品を展示するために設計された空間です。
建築を手掛けたのは、建築家 西沢立衛。妹島和世とのユニット SANAA としてプリツカー賞を受賞し、世界的に高い評価を受けている建築家です。
この美術館を訪れてまず感じるのは、建築と自然の距離の近さです。
曲線を描くガラスの壁の向こうには、150種類以上のカラーリーフプランツが広がり、四つの吹き抜けからは柔らかな自然光がふんだんに降り注ぎ、まるで森の中にいるような感覚が静かに広がります。

そして、この美術館の空間で特徴的なのが「床」です。
館内の床は完全な水平ではなく、土地の起伏をそのまま生かした緩やかな傾斜を持っています。
その空間を歩いていると、どこか身体の感覚がゆるみ、静かに意識が外れていくような感覚があります。
非日常で、思考が変わる
整えられすぎた空間に慣れてしまった現代では、建物はたいてい完璧な水平と直線でつくられています。
けれどこの美術館では、自然の起伏がそのまま空間に取り込まれており、完璧な水平と直線が存在していない。その曲線が作る空間は、どこか心の緊張までほどいてくれるように感じられるのです。
アートは、考えるものではなく感じるものだと言われることがよくありますが、確かに作品の前では、無意識に感覚が先に動いています。
けれど不思議なことに、作品や空間に触れていると、まったく別の場所にあったはずの日常の出来事や仕事のことが、ふと頭に浮かび、思いがけず答えが見えてくる瞬間があります。
アートは思考を止めるものではなく、思考の質を変えるものなのかもしれません。
静かな美術館の中で、少し傾いた床の上をゆっくり歩きながら作品を眺めていると、気がつけば頭の中にあったいくつかの思考が、静かに整っていることに気づきます。
軽井沢には、自然だけではなくこうした文化の空間が静かに息づいています。
森の中で過ごす時間とアートに触れる時間…
その両方が重なることで、この町での滞在はただの旅行とは少し違うものになるのかもしれません。
忙しい日常から少し距離を置き、思考を整える時間を過ごしたいとき。
そんなときに、ふと思い出していただきたい場所のひとつです。
こちらのブログで紹介した場所
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軽井沢千住博美術館
〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
【営業時間】
9時30分-17時(*入館は16時30分まで)
【定休日】
火曜休館(但し、祝日の場合・GW・7〜9月は開館)
冬期休館:12月26日〜2月末日
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